病院業界動向と不動産鑑定
福岡県の病院数および病床数の動向について、過去20年の推移を以下にまとめます。
1.病院数の安定と微減
福岡県内の病院数は、全国的な医療施設の統廃合の影響を受け、2000年代から徐々に減少しています。特に2020年代には、効率化のために小規模な病院の統合が進んでおり、総病院数はわずかに減少傾向にありますが、大規模病院への集約が進むことで全体的な医療提供体制は維持されています。
2.病床数の高水準維持
福岡県の病床数は、他の都道府県と比較しても高水準で、特に高齢化が進む中での療養病床の需要増に対応しています。2021年の時点で約82,000床と、全国4位の多さを誇っており、これは人口が近い他県と比べても多いです。北海道や静岡県と比較しても、福岡県は医療提供能力が非常に高い水準にあることが特徴です。
3.地域ごとの医療提供体制強化
県内では、福岡市や北九州市などの都市部に医療資源が集中しがちですが、過疎地域や地方都市でも病床や医療人材の確保が進められています。特に、二次医療圏ごとに医療ニーズに応じた病院配置が行われており、地域ごとに高齢化に対応した療養病床やリハビリテーション施設の整備が推進されています。
4.将来展望
福岡県は今後も高齢化が進む見込みで、医療需要は増加が予想されます。このため、既存病院の効率的な運営や地域連携の強化が求められており、特に在宅医療や遠隔医療の充実が重点とされています。県の医療計画に基づき、引き続き病院数と病床数を適切に維持し、地域ごとの医療ニーズに応える体制の強化が図られています。
総じて、福岡県内の病院業界は地域別の医療ニーズに対応しながら、効率的な医療提供体制の構築に向けた動きが続いています。
病院不動産の鑑定評価を行う際には、医療施設特有の要素を考慮することが重要です。
以下に、主要なポイントを示します。
1. 立地の重要性
病院の利用者には高齢者が多いため、公共交通や主要道路へのアクセスが重要です。地域の人口動態や医療需要も評価に影響し、アクセスの良さは医療スタッフの採用・維持にもつながります。
2. 施設のレイアウトと柔軟性
病院内の診療科や部門の効率的な配置が評価において重要です。将来の医療ニーズ変化や再編に対応できる柔軟性もプラス要素です。
3. 医療設備とICTインフラ
電子カルテやオンライン診療などのICTインフラが整備されているかが評価に影響します。IT対応が可能な構造や設備の導入が容易な建物は高評価につながります。
4. 省エネ・環境対応設備
サステナビリティが重視される中、省エネ設備や再生可能エネルギーの活用は長期的な運営コスト削減に貢献します。環境に配慮した病院は社会的評価が高まり、収益安定にも寄与します。
5. 診療報酬と収益性の見通し
日本の病院は診療報酬制度に依存しているため、政策変化が収益に影響します。診療科ごとの収益性も評価に含め、特定診療科に特化した施設は需要が高いです。
6. リスク要因の評価
法的リスクや市場リスクを考慮します。近隣の医療機関の新設や法令改正による改修費用もリスクとして捉える必要があります。
【まとめ】
病院不動産の評価では、立地、施設の柔軟性、ICTインフラ、省エネ対応、収益性、法的リスクを総合的に考慮し、将来的な収益性と安定性を見据えた評価が求められます。