物流業界動向と不動産鑑定
以前、とある士業の先生と話をしていたときのこと、私が半導体工場の鑑定評価を行った際半導体業界の本を3~4冊ほど読んで勉強したと話したところ、非常に驚かれておりました。
不動産鑑定評価は単なる計算作業だと思われていらっしゃる方も多いかと思いますが、全くそのようなことはなく、計算するという作業はほんの一部(自分の感覚では5%くらい?)で、評価対象の業界を含む一般的要因、地域要因、個別的要因の分析が重要です。(それと同じくらい物件の確定・確認作業も重要です。)
ということで、今回は物流業界と不動産鑑定について、簡単ではありますが書いてみました。
日本の物流業界の動向
- 2024年問題(労働規制)
トラックドライバーの年間残業が960時間に制限され、ドライバー不足とコスト上昇が懸念されています。これにより効率的な運行管理や自動化が必須とされています。 - デジタル技術とAIの導入
AIを活用した需要予測やルート最適化が進み、輸送効率やエネルギー削減が実現されています。倉庫管理でもAIが活用され、業務効率が向上しています。 - サステナビリティの推進
脱炭素化に向け、電動車両や再生可能エネルギーの導入が進展しています。大手企業も環境負荷低減のためにサステナブルな燃料や電動車両を導入しています。 - モーダルシフトとインフラ改善
鉄道や船舶の活用が進み、物流の効率化と環境負荷低減を図るモーダルシフトが推進されています。
福岡県の物流業界の動向
- 新規物流施設の開発
福岡市近郊では物流施設の建設が盛んで、特に空港や高速道路近隣での開発が進んでいます。これにより九州全域への配送拠点としての役割が期待されています。 - モーダルシフトの推進
九州ではフェリーや鉄道を活用したモーダルシフトが進められ、トラック輸送への依存を減らす動きが見られます。 - 福岡市の物流拠点としての強化
福岡市はその地理的優位性から九州全体の物流拠点としての重要性が高まり、企業による物流用地の需要が増加しています。
不動産鑑定評価への影響
- 2024年問題による物流施設需要
労働時間制限の影響で中継拠点やラストワンマイル配送施設の需要が増加し、物流用地の価値上昇が見込まれます。 - ICT・自動化対応施設の評価
AIや自動化に対応した最新設備の物流施設は高い評価を受けやすく、設備更新可能性も重要視されます。 - モーダルシフト推進による立地価値
鉄道や港湾アクセスの良いエリアの地価が上昇し、これを評価に反映する必要があります。 - ラストワンマイル拠点の重要性
Eコマースの拡大で都市近接型の物流施設の需要が高まり、立地条件の評価が重要です。 - 環境対応と持続可能性
環境負荷を抑えた設備を備える施設は企業からの需要が高く、収益性が見込まれるため、高評価となります。
このように、不動産鑑定評価においては物流業界の最新動向を鑑み、立地、設備、環境対応を考慮した評価が求められます。近年福岡県内では、物流・工場用地の開発が盛んに行われています。従前は、高速道路IC、空港、港湾への接近性ばかり注視されていましたが、近年では労働力確保の難易が重要になってきております。このような変化も見逃さないようにしたいものです。