使用貸借の評価についての考え方

使用貸借が付着した土地とは、所有者が無償で他者に土地を使用させている状態を指し、賃貸借と異なり貸主に賃料収入は発生しません。このため、所有者は経済的利益を得ることができず、土地の使用や収益、処分に関して大きな制約を受けることになります。


理論上は契約の終了や貸主の死亡により使用貸借も終了し得ますが、実務上は親族間や長年の慣習に基づく契約が多く、終了交渉や明渡しが容易ではありません。そのため、更地としての自由な利用や売却を前提に評価を行う場合には、使用貸借による制約やリスクを反映した減価が不可欠となります。


評価上の主な減価要因としては、まず賃料収入が得られず、土地の投資価値が損なわれる点が挙げられます。さらに、解約や明渡しの交渉にはトラブルが生じやすく、長期にわたり利用状況が固定される可能性があります。加えて、家族間の口頭契約などでは法的整理が難しく、裁判などの手続きを要するリスクも高くなります。このような状態の土地は市場でも敬遠されやすく、流動性が著しく低下します。


総じて、使用貸借が付着している土地は、所有者による自由な利用や処分が制限されるため、市場価値が大きく下がる傾向にあります。評価にあたっては、不動産鑑定評価基準に基づき、法的リスクや解消可能性などを総合的に分析し、適切な減価幅を設定することが求められます。実務では、対象不動産の実態把握とともに、鑑定士の専門的な判断を踏まえて評価額を決定することが重要です。 使用貸借の鑑定評価も共有持分の鑑定評価同様、個別の事情に左右されるため、非常に難しい評価です。通常の賃貸借に比べ明渡しが容易であるため、ほぼゼロ評価と考えることもできますが、訴訟の現場においては何らかの価値を認められるケースが多数です。したがって、これらの価値を、如何に説得力をもって説明できるかが非常に重要なポイントになると思います。私も調停・訴訟に関して使用貸借の不動産鑑定評価の依頼を受けますが、説明性を持った不動産鑑定評価書を作成するようにしています。