土壌汚染の評価についての考え方
土壌汚染への対応策には、主に「区域外処理」と「区域内措置」があります。区域外処理とは、汚染された土壌を搬出して他の場所の土壌と入れ替える方法であり、区域内措置には、掘削を伴う「封じ込め」「不溶化埋戻し」「オンサイト浄化」などの他、掘削を行わない「原位置封じ込め」「原位置不溶化」「地下水汚染の拡大防止」「盛土・舗装」「立入禁止による管理」などがあります。
一方で、「形質変更時要届出区域」は、土壌汚染が確認されているものの、直ちに健康被害の恐れがあるとは評価されていない区域です。このため、必ずしも除去等の措置が求められるわけではなく、建物を建てるなど土地の利用は可能です。ただし、利用が可能であることは、区域指定が解除されることを意味するものではありません。
不動産鑑定評価において土壌汚染は、「個別的要因」の一つとされ、価格に大きく影響します。評価上の主な影響要素は、「対策費用」と「スティグマ(心理的嫌悪感)」の二つです。前者は土壌浄化などにかかる実費であり定量的に評価されます。後者は、土壌汚染に対する不安や嫌悪感などから、市場性が低下するリスクであり、定性的な要因として扱われます。
鑑定評価においては、一般的に「土壌汚染のない場合の地価」から「対策費用」と「スティグマによる影響」を控除して価格を算出する手法が最も実務的です。つまり、土壌汚染は地価の下落要因として明確に反映されるものです。
なお、福岡県における要措置区域や形質変更時要届出区域の指定状況は、県の公式ウェブサイトで公開されており、誰でも確認できるオープンな情報となっています。過去の地歴に工場が存していないから土壌汚染はない、とは言い切れません。地下水が基準値を超えている場合にも土壌汚染とみなされ(この場合、自然由来の土壌汚染と言います。)、このような場合の不動産鑑定評価も非常に大変なものになります。
要措置区域や形質変更時用届出区域は福岡市や弊所が存する大牟田市のみならず、県内全域に点在しています。私も土壌汚染に係る不動産鑑定評価の依頼を受けたことがあるのですが、土壌汚染調査業者へのヒアリング実施や対処法に係る金額の算定等、評価の難易度は非常に高いものでした。弊所ではこのような土壌汚染に係る不動産鑑定評価の実績も有しておりますので、ぜひご相談ください。